ウィーンの我が家でマスタークラス、初心者のフランス・マダムがギロックのサラバンドを弾けるようになった件

ピアノとヴァイオリン

以前お話しした、生徒さん、キャリア・フランス出身マダムのその後です。
彼女はコロナのロックダウンの前、1ヶ月くらいズブの初心者として私のところに入門しました。やる気満々だったのですが、ロックダウンが明けてオフィスに呼び戻され、ピアノが中断状態だったのです。

しかし夏に時間ができて、8月のバカンスの前に集中的にピアノを習いに来たい!と言っていて、合計5回のレッスンをしました。そのご報告。結果、予想外に進歩して、ギロックのサラバンドが暗譜で、少しゆっくりのテンポではありますが、いい感じで演奏できるようになりました。もう一度書きますが、彼女は全くピアノを習ったことのない状態で、うちに習いに来て5回くらいレッスンを受けてロックダウン、数ヶ月のブランクがあって、先週、レッスンを再開したのです。それでサラバンド弾けるって、すごくない?

この集中レッスンを始めるにあたって、2人で計画を立てました。
まずは、前回始めようと思っていたサラバンドをできるところまででいいので、なんとか美しく演奏できるようにしよう、と。譜読みのソルフェージュももちろん並行して行います。
ありがたいことに彼女はやる気満々。

彼女、うちに来たときに、「ドレミファソラシド」という音名は知っていました。(なんたって、フランス人)
今は、どの鍵盤がどの名前、音名を言ったら弾ける、というところまで進歩しました。このまま続けて行ったら、楽譜を読むのも早くなるでしょう。

ギロックのサラバンドはもう、本当に美しいメロディーで多くの人の心を鷲掴みにします。

弾く、と言ってもただ鍵盤を押して音を出すだけではダメなので、きちんと丁寧にかなり細かく教え込みます。まずは右手から、2の指でこの美しいメロディーの出だしだけ、かなりしつこつやります。何分もかけます。どこかっていうと、「ド・ド〜」だけです。

肩や腕に余計な力が入らずに、綺麗な美しい音が伸びることを確信させます。リラックスして、しかし美しい響きが生まれるように。ピアノの蓋で打鍵してみたり、いろんなことをします。呼吸も教えます。それがサマになってきたら、シドレミの16分音符部分、これも初めは1234の指でノンレガートから細かく細かく、練習します。とにかく積み重ねです。
手首を柔軟に、シドレミがレガートに自然に弾けたら、また一段階クリアです。

細かく書くとキリがないので、書きませんが、こうやって辛抱強く、亀のテンポで作り上げていきます。

右手がかなり良くなったら左手。この曲の左手は殆ど2音の重音ですが、初心者には単音で弾くよりも重音は簡単です。これもリラックスして呼吸を整え、一定のテンポで弾けるようにします。
この左手の動きは、譜読みの練習にも最適なのです。

「うちで徹底的にやるから、別にやってきたかったら練習してきてもいいけれど、やらなくてもOK」と言ってあるのですが、彼女はやる気の塊なので、習ったことは次の日、完璧くらいに練習してきました。家では予習はダメ、練習したいのならば、あくまで復習のみです。

このレッスン、はたから見ていたら面白かったと思いますが、彼女は毎回毎回、「集中、集中〜、フゥ〜〜〜〜〜!!!」と呼吸を整え、ヨガ教室みたいに掛け声をかけちゃって、私も「すごい!」だの、「大丈夫!できるぅうううう!!!」なんてやっていました。

結局、部分練習でハジからおぼえてしまうので、最後は暗譜で弾けるようになりました。
部分練習と集中力の賜物です。「本当にあなたはすごい!シャポー(尊敬)としか言いようがない!」と褒めちりぎりましたが、決しておせじではありません。

8月のバカンスで、ホテルにピアノがあったら、絶対に弾いてやるわ!と鼻息荒くウィーンを去りましたが、9月から、どんなことがあっても自分だけの時間を作ってレッスンに来るそうです。

つくづく、大人がやる気を出すとすごいと思います。
楽しい集中レッスンでした!