ピアノでもヴァイオリンでも「うちの子、うちで全然練習しないんですけれど、どうしたらいいですか?」

ピアノとヴァイオリン

ご存じ、熱心な親御さんが、絶対にいう言葉のナンバーワンです。
私もヴァイオリンではありますが、ムスメが子供の頃先生に、それはもう、何万回も言った言葉です。

結論、私の場合でありますが、趣味であれば、別におうちで毎日2時間とか練習しなくて良いと思っています。
もちろん練習したければ何時間でも練習してくれて全然これもOKです。

上の、親御さんが言う「うちの子、全然練習しないんです!」はたいてい大袈裟で、全く練習していない、なんてことはほぼありません。教師はみていればどのくらい弾いてきたか、わかります。極端な話になりますが「本当」に全く練習しない、興味もない、という場合はやめさせてあげたほうが良いと思います。子供が全く家で練習しないのには「理由」があります。親にとってもお金の無駄、子供にとっては時間の無駄です。他に楽しい子供時代を与えたほうが良いです。押し付けは絶対にアウト。

教師が魅力的なレッスンをして、子供が「あ〜、この曲すごくかっこいい!」とか「面白い!」と思えば、本当に子供って自分から自然にうちで弾きます。練習します。一方、教師がどんなに優れていても「その人(子供)とピアノが元から合わない」という場合も当然あるわけで、それはもうどうすることもできないのです。

私の場合は、別に毎日数時間の練習をしてくれなくても全然構わないのです。なぜかというと、うちに通って、私の言った練習をしてくれれば、ある程度弾けるようになる事は、経験からわかっているからです。いつも暗譜で人前で楽しく弾ける曲が数曲あれば、焦る必要はない。楽しく一生ピアノをやっていただければ、それで私も生徒も満足なのです。あくまでもうちの場合です。

アジアではきっと、趣味でも毎日数時間練習するのが義務、という風潮もあると思います。「自分がやりたくないことでも我慢して、忍耐を持って続ける」ことが美学とされる場合も多いと思いますが、それで大人になってから、やっと「嫌なピアノ」から解放され、そこから死ぬまでピアノに触らない人生を送った場合、子供時代の「嫌なことをして培った『何か』の時間」は、一体なんのためなのか、と私は思うのです。持論です。

それをしなければ「クビ」なんて先生がいらしてもいいと思うし、それぞれです。それはそれで良いと思うし、欧州で行われている「ピアノのお稽古」とアジアのそれとは、本当に根本的に違うものがあることを、私は35年ここに住んで経験して知っています。

しかし、しかしですよ。「音大に行きたい!」とか「ピアノやヴァイオリンを仕事にしたい!」という場合は全然話が違います。

どんな子供でも、年齢に関わらず1日に「数時間」練習しなければいけませんし、それをコンスタントに、ず〜っと続けなければいけないのです。
「楽しい」だなんだなんて、そんな甘い話ではないのです。楽しくない時だってあるし、好きでない曲もやらなければいけない。普通の生活でも、「普通の人がやることが絶対にできない」なんてこともザラに出てきます。これが「仕事にする」ということなんです。欧州では「趣味」と「仕事にすること」の捉え方がはっきりしているのです。

だから、趣味で楽器を習う場合、ある程度はおうちで練習するべきですが、「練習しろ」「練習しろ」と親にいわれて、ピアノが嫌になっちゃってやめちゃった、という例もたくさんあると思います。数年習っていて、マトモに弾ける曲が全くない!というのではかなり問題で、続けさせるかどうか、教師を変えるかなど、考えるべきですが、弾ける曲がコンスタントにあって、子供が喜んでレッスンに通っているのならば、必要以上に練習しろ〜〜と言わない方が良いかもしれません。と私は思います。ここウィーンでもたまに聞きます。「子供の頃、ピアノの先生が怖くて、親が練習しろってうるさくてもうトラウマになってやめた!」とおっしゃる大人のピアノ復活組の生徒さん達です。

全くの趣味の場合、子供が自分からある程度練習して、楽しんでレッスンに通うのであれば、放っていても先生がちゃんとしていれば大丈夫だ、と私はいつも思っています。