昨今、YouTubeや他の動画で、プロの演奏家が「譜読みの様子」をアップし、彼らがどのように譜読みをしているかを見ることができます。
きっとピアノを始めて間もない人がこのような動画を見ると、「すごいなぁ、かっこいいなあ」思うと同時に「こういう風に譜読みができたらいいなぁ」になり、「こういう風に譜読みが出来ないといけないんだ」、と思い込んでしまう傾向があります。
しかし気をつけてください。
YouTubeなどでいきなりインテンポで両手でさらさらさら〜っ、と音を取り、面白いように弾けるようになっている人達は、幼い頃から何時間も毎日、とんでもない練習量を重ねてきているわけです。すぐに同じように譜読みができるわけがありません。まずはその事実を知ることが大事です。
ピアノでもバイオリンでも、私の知らないスポーツの世界でも、テニスでもアイススケートでもバレエの世界でも、今まで積み重ねてきた「練習時間」というものは、どんなにお金を積み重ねても買えない、大変意味のあるものなのです。
昨日私がブログで書いたように、100%の完璧を求めるのはやめましょう、と言うことです。まずはいきなり譜読みができる、と言う妄想は捨てましょう。
経験時間数の圧倒的に少ない人が、それでも出来る、効果のあるワークのひとつとして、「冷静に計画を立てる」と言うことがあります。
まず、弾きたい、思う曲の楽譜を眺めてみましょう。そして「現実的」に、自分は、どのくらいの時間で、何が出来るようになるのだろうか、ということを考えます。
まず、「左右別々でもテンポで弾けるようになるまでにはどのぐらいの時間がかかるかしら?」等、数小節、自分で実際に弾いてみると感じがつかめるでしょう。
そして予想を立てます。その時に無理をしてはいけません。「ああ、他の仕事もあるし、このくらいかな?」とか、「きっと左手の難しいところだけでもテンポで弾けるようになるには、部分練習を重ねて、まず2日かかるな、無理だな、3日だな、」とかです。
そうしながら自分で1曲の完成向かって未来図を描いていくのです。もちろんその計画は事情によって変えても構いません。大切な事は計画を立てることなのです。
このお仕事、結構楽しいのですよ。楽譜を眺め、「あらー、ここは厄介そうだから初めに手をつけよう」とか考え、近い将来に楽しくカッコよく弾けている自分を想像するのです。
以前にも書きましたが、最も時間の無駄なのは、曲の冒頭からいきなり始めることです。どんなプロの演奏家でも、全く知らない楽譜を読む時は計画を立てます。ただその速度が、初心者とは比べ物にならないくらい速い、と言うだけです。だって人生で弾いてきた時間が圧倒的に多いのだもの。
今までやっていなかった人はぜひ計画を立てて曲に取り組んでみてください。