ピアノやヴァイオリンの先生へ 親御さんのリクエストをいちいち受け入れないすすめ

ピアノとヴァイオリン

ピアノを教え始めた頃やまだ若かった頃、経験の浅い時はちょっとした外野の話も気になったものです。
今日のお題は、ずばり「いちいち、とくに素人の親御さんのいうことに惑わされないこと」をお勧めしたい、です。

以前も書きましたが、ある素人の親御さんから「うちの子供たち(大人なんですけどね)ピアノはとっても上手に弾けて上級なんですけど、楽譜が読めないんです。これは悪いことですよね。このままだと良くないと思うので、楽譜が読めるようにレッスンしてください」というリクエストがありました。

素人さんのいっていることなので、仕方がないのですが、間違えがあります。
まず、「ピアノがとっても上手に弾けて上級」これはちがう。それが事実なら、音大に行ってるか、コンクールでもとってバリバリに弾けるはずです。「楽譜が読めないのはわるいこと」これもブー!!!です。ピアノでもヴァイオリンでも、人前で美しく演奏できればOKなのです。別に楽譜が読めないことは本人にとっては欠点かもしれませんが、悪いことではありません。ジャズとか違う分野で、五線紙上の音符がスラスラよめないひとなんて、ザラにいると思います。

大きな勘違い。
初めの話し合いと、レッスンで私がみたところによると、問題は、楽譜が読めないことではなく「きちんとピアノをプロフェッショナル(私のいうプロフェッショナルとは専門になるという意味ではなく、きちんと、誠実に、正しく学ぶ、という意味です)に学んでこなかったこと」でした。なんとなくピアノを適当に習って、曲だけはソラで良い加減にそれらしく弾いてきた。教師も別にどうでも良いや、と思って指導していたのだろうし、生徒も親も誰一人、今までのピアノレッスンの経緯に問題を感じなかった、これです。でもまあ、これあたりまえで、誰にも指摘されなければ素人の人には全然わからないです。だから、誰が悪いという問題でもない。しいていえば、真剣に導く意志のあった教師に巡り合わなかった不運、ということでしょう。

さて、親御さんが先走る場合もあります。
すっかりピアノをやる気を失ってしまった息子さんをつれ、初めてうちに来た親御さんが、「これなら彼のやる気が出るんじゃないか!」とオンラインで購入してしまった、クィーンの楽譜を私に差し出す。「これならノレる曲だし、簡単そうじゃないかしら?!」

オイオイ、です。別にポピュラーでもなんでも教えますが、こういうものって大体リズムも複雑だし、モーツァルトやハイドンより譜読みははっきり言ってずっと大変なんです。それを親は知らない。「簡単だと思うなら、あなたが弾きなさい」です。

これをやられてしまうと、いくら私が説明しても、息子の方は「ああ、僕には難しいんだ」って思っちゃうし、もう、楽譜が音符だらけで、オクターヴの連続だったら「難しい曲!」と思ってしまうこの、中途半端な知識にも閉口しました。

いちいち説明するのも大変ですが、できるだけ、傷つけないように説明する努力はしています。
若い頃は、アホみたいな楽譜を持参されても、頑張って指導したりしたりしたのですが、今ははっきりと意見を述べて理解を求めます。
話してみればなんとかなるので、いいなりにならず、正しいと思える御自分の指導法を進めることが一番ですね。